労働相談・解決事例

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労働相談

相談の前に……

あなたは悪くない

まず最初に言っておきたいことがあります。
たぶん「あなたは悪くない」ということです。
誰が見ているかわからないホームページでこんなこと言うのは無理があるかも知れません。だって、このページを見ているあなたをパワハラしている課長さんが、このベージで自身の長時間残業の問題について調べているかも知れませんからね。あなたから見たら、課長さんは悪い。
そして、あなた自身が問題のある労働者であると自覚しているかも知れません。ミスが多い、遅刻ばかりする、ノルマを達成できない。

でも、自分を責めるのはやめましょう。完全な人間はいません。
悪いところは改善すれば良いのです。自分に弱みがあったら会社を批判していけないのでしょうか。そんなことありませんよ、もちろん。

ある心理カウンセラーの方からお聞きした話ですが、メンタルヘルス上の問題を抱えて相談にやって来る方のかなりの多くは、実は労働問題を抱えている人だというのです。その先生は公務員の方のそうした悩みの相談をしばしば受けるのだそうです。自分が悪いから会社に適応できない、まじめな人ほどそう思ってしまうようです。実は違法な過重な労働を強いられているのが、心の問題の原因だったりするのです。会社にはパワハラ・セクハラなどのハラスメントを防止し解決する義務があります。

自分を責めて追い込まないでください。
最近はパワハラを伴う労働相談がかなりあると、ベテランの相談員の方は証言しています。まずは、我々にでも相談しながら、心を休ませつつ問題を冷静に見ながら、一緒に解決して行きましょう。焦ることはありません。

あなた会社の問題点をチェックしてみましょう

労働者の健康と生活を守るために法は様々な規制を設けています。
8時間労働制とか、残業したら残業代を払わなければならない、休んでも賃金が引かれない有給休暇というものがある、ということは多くの方がご存じでしょう。小学校・中学校の義務教育はもちろん、高校・大学でも、就職した後のことを考えての、労働者教育って行われていないんですよね。一番に自分を守ってくれる知識なのに!

大企業のように労働関係法規を良く承知している担当者がいても、搾取するために意図的に様々な違法または不当な労働条件によって管理されている職場もあれば、経営者が労働法規を知らずに、自分もそういう中でやって来たと、労働法規に無頓着な会社もあります。

このページを見ている方は、おそらく何らかの事象につい違法・不当ではないかと考えていると思われますが、そうした課題を抱える職場は、違法部分が一つや二つではないことが多いのです。

ハッキリとご自身の問題を自覚している方は以下のウェブサイト等で事案の確認をしてみてください。つまり、何の法律のどこの条文にどう違反しているかを調べてみてください。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/pokerou2022_zentai.pdf

上のURLは東京都産業労働局雇用就業部労働環境課が毎年6月ごろに編集発行している「ポケット労働法」という小冊子がありますが、それのWeb版です。働く人が知っておくべき法令について、誰にもわかりやすく、大切なことがもれなく書いてあります。東京都の労働関係施設で配布されてもいます。私どもも組織内で学習用に配布することもあります。

他にも問題が……

例えば、長時間残業に苦しむ職場では、36協定(残業をさせるために必要な労働者と経営者との協定)が結ばれていない、就業規則の内容は労働者に周知されていない(自由に閲覧できない)、就業規則を変更する時には労働者代表の意見書を付して労働基準監督署に届け出なければなりませんが、こうしたことがきちんと守られていることはまれです。

労働条件が一方的に改悪されるような職場では、こうした様々な法令違反が見られるものです。口では「働くみなさんのために…」と言うにも関わらずにです。法律は「最低の倫理」です。

会社はある意味では、会社に出資している者の所有物です。しかし、そこで働く人の労働条件は、そうした所有者の好き勝手にはできません。資本主義の初期のころにはそうした資本家の好き勝手を野放しにしたことで、社会は乱れました。

実は法律にも以下のように労働条件は労使対等の立場で決定するものだとの原則が明記されています。

労働基準法
(労働条件の決定)
第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
労働契約法
(労働契約の原則)

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

これはしかし、労働組合がない職場では絵にかいた餅に過ぎません。この対等性を維持するための仕組みである労働組合がなければ、達成することができないと言っても過言ではありません。

組合があっても一部の大企業にあるような会社の労務部の親衛隊のような組織ではクソの役にも立たません。

労働組合のない職場は違反のオンパレードです。会社の門からは「憲法と労働基準法は入れない」という人もいます。

労働条件の簡易チェック

以下は良くある職場の違法状態です。大したことではないと思うかも知れませんが、こうしたことが守られていない所は、総じて労働条件と労使関係に問題があると言っても良いと私たちは考えています。

【賃金】

これは意外に単純で一番肝心なのは最低賃金(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/地域別最低賃金、全国一律のものはなく都道府県別に定められた最賃)です。時間給で定められています。ごく一部に例外がありますが、これ未満の賃金で働かせることはできません。タクシー業界の一部では、歩合給を労働時間で割ると最低賃金割れをしているところもあります。また、街なかのポスターには最賃未満の求人募集も良く見かけますし、見習い期間中の賃金が最低賃金割れしている例もあります。

【残業代】

あなたの会社では①課長以上には残業代が付かない。②固定残業制だから、残業代がきちんと払われている―などと言われませんか。

①は「名ばかり管理職」の問題として、マクドナルドの店長に残業代が払われなくて違法だと新聞ネタになったのでご存じの方もいるかも知れません。役職名は直接は関係ありません。残業代を支払わなくてよい「管理監督者」は、労務管理について経営者と一体的な立場にあり、職務内容や職責の重要性から厳格な労働時間管理になじまず、その地位にふさわしい高い賃金が支払われているなどの要件を満たす必要があります。
②固定残業代も最近よく取られる手法ですが、残業代算出の基準になる基本賃金部分がハッキリしなかったり、固定残業代が通常の残業時間で計算した残業代から考えると低過ぎる固定残業代が設定されているなどといった問題が頻発しており、最近は固定残業代制度のある会社は要注意と指摘する声もあります。

【有給休暇】

何か特定の理由がないと休めない職場があるようですが、それは大間違いです。法事、通院などの理由は必要ではありませんし、理由を示す必要もありません。それは法律の条文を見ても分かります。「請求する時季」に与えなければなりません。

労働基準法第39条第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

この他の事案については、同じ全印総連の京都地連のQ&Aも参考にしてくださいね。
https://www.ppwu-kyoto.org/hatarakikata


以上のような労働条件で問題のある企業は、以下の点でもだいたい違法状態になっていることが多いことは、我々が日頃経験していることですので、これらもチェックして見てください。

【就業規則】

10人以上を雇用する使用者はこれを定めなければいけません。制定や変更には労働者代表による意見書を付して労基署に届け出なければなりません。労働者代表も挙手や投票で民主的に選出しなければなりません。

(作成及び届出の義務)
第八十九条常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(作成の手続)
第九十条使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
②使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

【36協定】

これを締結していないと、そもそも残業をさせることができません。
これは会社と労働者代表が(過半数組合がある場合はその代表者)と締結するものです。就業規則の労働者代表と同様、民主的に選出されなければなりません。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

【休憩】

昼休みは一斉に付与し、自由利用が原則です。電話番をさせられながらの昼休みは違法です。一斉にとらせなくても良い一部の業種などもありますが、それは例外です。

労働基準法
(休憩)
第三十四条使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
②前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

証拠を保全しよう

上記の様々な問題点の改善点を求めて労基署に訴え出たり、労働組合に駆け込んだりする前にちゃんと証拠を確保しておきましょう。

会社は「そんなことは言っていない」、「そんな事実はないと」と平気でウソをつくことがあります。目撃していた同僚も会社側の圧力に抗しきれずに、証言などしてくれることはまれです。文書の改ざんすらされることもあります。

そのためには、録音や写真、コピーなど違反事実をしっかりと客観的な記録として残しておきましょう。

ただ、行き過ぎになって盗聴まがいのことや、証拠収集に違法な手段を取ってはいけません。

やはり最良の解決手段は労働組合にまず相談することです

違法だから、労基署に訴え出たらすべて改善される、と思われるかも知れません。同様に裁判に打ってでれば、法律違反はすべて是正される、と思いたいのはやまやまですが、実はそうでもありません。
もともと、労働関係法については、学者や法実務家(弁護士など)の間でも立場の違いで法解釈や適用には対立の多い分野です。

労基署は労働基準法を中心にする一部の法律の違反を監督するのが仕事です。ルール違反だからとすべての違反を是正させるわけでもありません。

また、労基署は残業代の未払いがあると支払するよう求めることもありますが、時効(2年間)かからないすべての未払いを払わせるわけでもありません。非常に限定的です。行政機関と司法機関は我々の味方とはいい難い面もあります。裁量的な部分では担当した”人”によっても違います。

細かいこと、具体的なことは我々に相談してください。

メールでも、電話でも、来所でも、手紙でもOKです。来所の場合は事前に電話等で日時を調整してください。組合に入る入らないはともかく、まずは相談を!

【参考】

皆さんを守る労働関係諸法令。カッコ内は略称です。

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